あたしは見逃さなかった。


旭くんの目が真紅色だったこと。


それは制裁者(アリス)特有の…操られている証拠の"邪眼"というものにもよく似た、憎悪に満ちた眼差しで。


――きゃははははは。


いつものあの旭くんではなく。


それを垣間見たのは一瞬。


それを鏡の光が消していったんだ。


ゆっくりゆっくり…

憎悪と殺気の真紅色が消えて行く。


同時に、旭くんの身体が崩れるように…垂直落下しそうになるのを、凜ちゃんが両腕で抱えて、一回転しながら地面に着地した。


続いて久遠も着地する。


「本当だ…

この頭は…旭じゃない…

骨…だったとは」


久遠は呆然と髑髏を眺め、そして目を細めた。


「この…

この気……」



凜ちゃんが旭くんを揺すぶった。


閉じられた瞼がゆっくりと開く。


そしてあたし達の視線を感じて、居心地悪い素振りを見せ――


「……えぐっ…」


突如泣き出して。



「旭、どうした?」


久遠が旭くんに声をかけると、


「久遠さま…」


旭くんの目がみるみる内に、涙に溢れかえる。


そして手を伸して、久遠から髑髏を奪い取ると、

それを両手で抱くようにして、大声で泣き始めた。



凜ちゃんは、ぽんぽんと旭くんの背中を叩いて、あやしているらしく。



「旭。

その骨――



月(ユエ)のものか?」



久遠の声に、旭くんは…


こくんと頷いた。