――…ちゃん、


アタシハアノトキ…


――…じゃいやああああ!!!


ココロハナクシテナカッタンダ。


絶叫。

悲鳴。


誰かが泣き叫ぶ。

旭くんのような男の子が泣きじゃくる。


やめて、叫ばないで。

あたしの心を乱さないで!!!


あたしの心を…

壊さないで!!!


ココロハアッタンデショウ?



――死んじゃいやあああああ!!!



「いやああああああああ!!!」


耳を押さえて蹲るあたしに、


「せり、おい!!!?」


久遠の慌てた声がふり注ぐ。


その時、頭上でばさりと風が吹いた気配がして。


一瞬――

橙色の風が吹いたのかと思った。


違う。


過去の残映でも、現在の願望でもなく。


色が違う。


漆黒色。


闇の中で艶やかに光る漆黒色の風。



ぼんやりと見上げると――

黒いモノが左から右へに大きく羽ばたいていた。


何…あれ?

両翼を広げた鳥?


それは…

凜ちゃんだった。