「気はすんだだろう、やめろ!!!」


しかし彼女は完全無視で。


「暴走するなッッッ!!!」


凜ちゃんの頬に向けられた久遠の正拳。


殴られる!!!


しかし凜ちゃんは片手でそれを受け止め、あたしとのキスを止めない。



「凜ッッッ!!!」


あたしの膝はガクガクとして、もう力が入らなかった。


それは呼吸が出来ないとか、キスが上手いとかいう単純な理由以外に、全身の血が…現実を拒むかのように次第に引いていったからだ。


くらくら。


意識が…薄れる。



「言ったろう、刺激するな!!!」



ずるずると地に崩れ落ちる時も、

凜ちゃんも一緒に崩れるようにしてキスをやめない。



貪られる。


何処を?


貪って。


誰に?


頭が痛いよ!!!



「せりの異変に気づけッッッ!!!」




久遠のその声に――


凜ちゃんが唇を離した。



闇色の瞳。


吸い込まれそうなその瞳。


それが拡がって、暗黒に引き摺り込まれる気がして。


怖くて怖くて。


ぶるりと震えた時、尻餅をついた状態のあたしの手は、鏡に触れた。


視界に入ってきたのは、銀色の中に映る真紅色。


真紅…?


ぼんやりとした頭には…その正体が判らない。



「――なッッ!!!」


突然久遠が声を上げて、空を見上げた。



「あれは――…」



何かが落ちてきたらしい。

それを久遠が両手で受け止めたみたいだ。



それは――


――きゃははははは!!!



笑った顔をしたままの…



「旭!!!?」



旭の"頭部"…だった。