美咲は確信した。あれは幻じゃなかった。あの5人は確かにあそこにいた、存在していた。少なくとも自分は確かにあの5人と一緒の時を過ごした。麻里の髪留めが美咲の手元にあるのが何よりの証拠だ。
 そして美咲はついに自分を「仲間にできない」という、あの言葉の真意を理解した。そして麻里の最後の言葉の意味も分かった。田舎で不便で何もないけれど、のどかで自然豊かで、心優しい人たちが住んでいた町がこの世に存在していた事を、それを「忘れないで」という意味だったのか?
 美咲の目から涙が一筋こぼれ落ちた。それがきっかけになって、美咲はその場にしゃがみ込み声を上げて泣いた。初老の方の女性が美咲の肩をつかんでなぐさめる口調で言った。
「大丈夫だよ。幽霊だとしても、生きてる者に悪さをするようなモンじゃねえから」
 そういう理由で泣いたわけではなかった。だが、ではなぜ泣いているのか?と訊かれたら美咲には説明できなかっただろう。