すぐに駆けつけて来た初老の医師は美咲の脈拍や心臓の鼓動を調べ、「うん、もう大丈夫だろう」と少し驚いたような口調で言った。するとコンコンとドアがノックされ、若い警官が遠慮がちに顔をのぞかせた。
「先生、ええかね?」
そう尋ねた警官に医師が大きくうなずくと、彼は一枚の写真を手に持って美咲のベッドに近づいて来た。
「あんた、名前は?」
「藤代美咲……です」
「なら、これはあんたのバイクに間違いないかね?」
そう言って美咲の眼前に差し出された写真には、海辺でクレーンに吊り下げられたバイクが写っていた。美咲は無言でおおきく首を縦に振った。警官は信じられないという口調で言った。
「だったら、あんた、丸二日近くも海の中にいたのか?いくら夏とは言え、それで助かったなんて奇跡だ」
開いたままのドアをまたコンコンとノックする音がした。見ると30歳ぐらいの女性と、初老の女性が並んで部屋の中をのぞきこんでいた。警官が二人を招き入れ、美咲に告げた。
「この二人があんたを浜で見つけて通報してくれたんだ。ほれ、この人、生きとるよ。先生がもう心配ないと言ってた」
「あら、よかったわあ!」
初老の女性の方がベッドに駆け寄ってきた。そして首を回して警官に顔を向けて訊いた。
「この娘さん、どこで海に落ちたんかね?」
「磯浜漁港だよ。その人のバイクが引き上げられてるから間違いねえ」
「……に会わせてよ」
美咲は彼らの言葉を遠い所から聞くような感じで、そう声に出した。
「は?誰に会いたいって?」
「先生、ええかね?」
そう尋ねた警官に医師が大きくうなずくと、彼は一枚の写真を手に持って美咲のベッドに近づいて来た。
「あんた、名前は?」
「藤代美咲……です」
「なら、これはあんたのバイクに間違いないかね?」
そう言って美咲の眼前に差し出された写真には、海辺でクレーンに吊り下げられたバイクが写っていた。美咲は無言でおおきく首を縦に振った。警官は信じられないという口調で言った。
「だったら、あんた、丸二日近くも海の中にいたのか?いくら夏とは言え、それで助かったなんて奇跡だ」
開いたままのドアをまたコンコンとノックする音がした。見ると30歳ぐらいの女性と、初老の女性が並んで部屋の中をのぞきこんでいた。警官が二人を招き入れ、美咲に告げた。
「この二人があんたを浜で見つけて通報してくれたんだ。ほれ、この人、生きとるよ。先生がもう心配ないと言ってた」
「あら、よかったわあ!」
初老の女性の方がベッドに駆け寄ってきた。そして首を回して警官に顔を向けて訊いた。
「この娘さん、どこで海に落ちたんかね?」
「磯浜漁港だよ。その人のバイクが引き上げられてるから間違いねえ」
「……に会わせてよ」
美咲は彼らの言葉を遠い所から聞くような感じで、そう声に出した。
「は?誰に会いたいって?」