「え?」
少し不思議に思い、聞き返してみる
「あと、で、きれば、」
「うん?」
「蓮香先輩以外は部屋から出て欲しいんです」
誰もが聞き逃すまいと聞いた声は、震える声
全員がだいたい何があったのかは予想がついたようで、誰も何も言わずに部屋から出ていった
最後に爽が蓮香、とあたしの名前を呼ぶ
向こうに朱莉がいるであろう扉に頭を預け、軽く目を閉じた
あたしが今すべきこと…
「橘を攫った奴がいない
もしかしたら近くにいるかもしれねぇ」
「うん」
「橘がどんな姿だったとしても慌てるな
橘にとって最善のことを考えろ」
そうだ
朱莉にとっての最善のことを
あたしは目を開け、爽の方を振り向いた
あたしは、
「大丈夫」
今大丈夫でないのは朱莉だ