二人の背中を見送りながら松橋は篠原の顔を見ずに口を開いた。

「人の事、言えねぇじゃねぇか」

すでに牛丼を口一杯に放り込んでいる篠原と目が合った。

「腕の痕だよ。
んな事出来んの祥太だけだろうが」

どうしてだが、祥太もそうだが他人の事には面倒な程に鋭いくせに自分の事になると、とんと駄目な奴が俺の周りには多いみたいだ。

「犬しか見えてねぇかと思ったが周りも見えてんだな」

口の端を歪ませつり上げた。

「沈めんぞ」