カタカタ…と、ゆっくり店のシャッターを開ける。

すると外から射す日差しが、店の中を満たした。

スズメかな?

チュンチュンと可愛い鳥のさえずりが聞こえる。

 店先に花を並べて、う~ん…と伸びをする。

見上げたら、清々しく晴れた、綺麗な秋の空。

気持ちいいなぁ。

花も喜びそうだ。

 僕の名前は
青野 梓(アオノ アズサ)。

僕の母さんの、小さな花屋で働いている。

でも、もう何年か前に母さんは病気で
天国に逝ってしまった。

だから今は僕の店みたいになってる。

父さんは花の仕入れには行くけど、店には出ない。

店に出るのは僕だけだ。

 店を開けるのは午前十時から。

陽が高く昇ってる時間。

夏の頃と比べたら今はとても涼しくて、花にとっても快適な季節。

「すいませーん!」

 店の奥で準備をしていると、十一時になって今日初めてのお客さんが来た。

 高校生くらいかな。

二人の男の子が店の前で僕を呼んでいた。

「三千円までで、見舞い用の花束作って欲しいんですけど…。できますか?」

「お見舞いですか? はい、大丈夫ですよ」

 そう言うと、二人は安心した顔を見せる。