唐突な提案に
あたしはポカーンと口を開けた。
「な……なんで…」
「だって、そうじゃん?
好きじゃないなら、俺も藤堂も何ら変わらない……違う?」
そう首を傾げて
あたしに聞いてくる佐野くんは
少しずつ、あたしに近づいてきた。
「さ……佐野くんっ!」
「試してみ?
そしたら……わかるよ」
そう言った佐野くんは
あたしの頬に手を添えると、
さらに顔を近づけた。
皐月のこと
そこまで好きじゃないなら
違う人とだってキスできるはず。
確かに、佐野くんの言っていることは正しい。
でも……
“何かが”
“何かが”違うんだ……
あたしは近づいてくる佐野くんの顔を手で退けた。