さっちゃん優しすぎ。


あたしが
そっちまで行った方が早く回れるのに……




そんなことを想いながら
あたしが“やるべきこと”を考えていると



皐月は走って
資料室に来てくれた。



「千菜」


「あー、さっちゃんだっ」



そう笑いながら走って
皐月に抱きついた。



「さっき電話したじゃん」


「電話だけじゃ寂しい~」



そう言って
皐月に笑いかけると、みるみる頬が赤く染まるのがわかった。




「はいはい。今から一緒にいられるだろ?ほら、行こ」



「うん」



皐月が差し伸べてくれた手を
迷いなく握った。



皐月の手は温かくて
心地よかった。





だから、一瞬だけ忘れていた。



『……だから今回も、お願いしてるの。藤堂くん、ちょうだい?』



さっきまでの
恐怖を感じた言葉たちを。