「あやちゃん、驚いてたなあ…。」
放課後、私は駅にとぼとぼ一人で向かっていた。
そういえば、彼はどうなったのだろうか。
公園に行ってみよう。
公園に着くと小さい子達が楽しそうに遊具で遊んでいた。
私は一番端のあいていたブランコに腰を掛け草むらを見た。
…あった。
まだダンボール箱はあった。
おかしいなあ。
小さい子達は気にならないのかなあ。
気がついていないのかな。
私は恐る恐るダンボール箱に近づいていく。
ノックしてみようか。
それとも前みたいにガバッと開けちゃう?
うー…悩む。
「ぐすっ…」
……?
誰かの泣き声が聞こえた。
…ダンボール箱からだ。
「泣いてるのですか?」
「泣いてない。」
「……開けても良いですか?」
「だめ。」
む。
なんだか不思議だ。
誰かも分からない、しかもダンボール箱に入っていて
「未来から来た。」という少年に私は今話かけている。
まるで、少女マンガ。
待っていた。
ずっと私は待っていた。
誰も経験出来ないような素敵な恋ができることを。
「名前……。」
「えっ…?」
「自分の名前が分からないんだ。」
ダンボール箱の中の少年は呟いた。
だから泣いていたのか。
「私がつけてあげます。」
「……。」
「……あ、嫌ですか!?」
「いや、お願いします。」
ふふ。
ん~悩むなあ。
ダンボールでしょ?
少年でしょ?
ダンボール……。
ボーイ……。
………。
あ。
「ダンボーイ。」
「……え?」
我ながらナイス!
「ダンボーイはどうですか?」
「ダサくない…?」
「ダサくない!!!」
気に入らなかったかな……?
「………分かった。自分の名前分かるまでの仮の名前な。」
「はい!!!!」
良かった……。
「君、名前は?」
「麻実です。」
「なあ。」
「はい?」
「……頼みたいことがあるんだけど。」