尋常ではない火力にも負けず、順調に炒めていく。


中身がこのれるのではないかと思うほど高く上げてみたり、くるっと回ってみせたりと、試行錯誤で考えたパフォーマンスを披露する。


傍に置かれたタイマーが十分をきった。


炒めあがったチャーハンを皿にのせ、舞台前に出た。


お辞儀をしようと腰を折ったとき、心の左目の端が何か動くものを捉えた。


見ると、三毛猫が体育教官室の窓の縁にいる。


開けっ放しにしていたので、入り込んだのだろう。


お腹を空かせた猫は鼻をヒクつかせながら、無謀にも心のチャーハン目がけてジャンプしようとしている。


「危ない!」


叫んだときにはもう遅く、猫は空中へ高らかと飛び出した。


心は咄嗟に、努力の結晶をのせた皿を放り投げた。


全力疾走し、舞台から飛び降りると、そのままスライディングで猫の下へ滑り込んだ。


猫は心の腹部に無事着地した。


「痛っ!!!」


唸り声を上げた心にお構いなしで、猫は散乱したチャーハンを食べ漁った。


「このバカ猫・・・」


心がこめかみをピキピキさせながら、猫に近づき首根っこを掴んでやろうとしたとき、周りが拍手の嵐に包まれた。


「え?」


驚き顔を上げると、心の目に笑顔の生徒達が映った。


「サイコー」


口笛も聞こえてくる。


心は猫を捕まえようと曲げていた腰を上げ、深々とお辞儀をした。