「エントリーナンバー二十八番。鏡夜心くん、お願いします」


リズミカルな曲が場内に流れ、幕が上がった。


選出するのに何時間もかかった曲。


登場の仕方は何度もシュミレーションした通り、側転とバック転のコラボレーションで舞台の中央まで移動した。


それだけでも、多数の目を奪える。


心が笑顔でお辞儀をしたのを合図に、すばやく下にローラーが付けられたキッチンを愁と優が運んだ。


このキッチンは中華料理店で使用されるもので、火力が家庭用とは桁が違う。


この日のために彼方が用意してくれたのだ。


心はキッチンの正面に立ち、包丁を握った。


練習で毎日握った包丁。


心はビデオで研究したように、にんじんを空中でおおまかに切り分けた。


そして、それらを驚くべきスピードでみじん切りにした。


他の具材も同様に調理したが、二分もかからなかった。


残り三分弱。


大きなフライパンに具材を入れ、コンロに火をつけた。


心の脳裏に練習した日々が走馬灯のように駆け巡る。





何度も練習した





くじけそうになる度に、彼らに後押しされた





みんなのためにも





この勝負、絶対勝つ!!!