歓声が湧き上がる中、実は一度反対側、つまり左壁まで流れ、足で壁を軽く蹴った。


再び教官室の方へ鎖が向かう。


実はタイミングを見計らい、つり輪から手を離した。


身軽さを見せ付けるかのような宙返りをしてみせ、真下の舞台中央に置かれた巨大トランポリンに着地した。


周りに救命マットが敷かれていたが、使用されることはなかった。


実がトランポリンから降りると、控えていたスタッフが、それら一式を素早く片付けた。


まだ三分残っている。


BGMが洋楽に切り替わった。


舞台袖から弧を描いて投げられた二つのワイングラスを受けると、それらを空中で弄びながら、曲に合わせて踊り始めた。


バック転をしたり、ブレイクダンスを踊ったりと、激しい動きが繰り出される中で徐々にグラスの数が増えていった。


五つになったグラスを器用に扱う。


曲の終わりを迎え、宙を待っていたグラスをキャッチすると、実は深々とお辞儀をした。


拍手喝采。


口笛や、歓声が飛び交う中で、心は気づかないうちに握っていた手を開いた。





水気を含んだ掌が、妙に熱く感じられた。