心と同じ考えの人間が居るらしく、校内はエントリーした人がちらほら見えた。


四階までくると流石に誰も居らず、静まり返っている。


廊下を歩いていると、誰かの話し声が耳に届いた。


忍び足で近づき、その人のいる教室のドアに耳をあてた。


「あぁ、ぬかりはない。絶対優勝してみせる」


口ぶりから出場者であることは間違いない。


心はライバルの顔が気になり、ドアの隙間から覗いた。


よく見えなかったので、手を掛け隙間を広げようとしたが、向こう側から力が加えられ、ドアは全開になった。


「「あっ・・・」」


正面からのご対面。


「水亀実・・・」


「お前は鏡夜だな?」


実は長い髪を掻き揚げた。


その姿もさまになり、思わず見とれてしまう。


「悪いが優勝は俺がもらう」


堂々とした勝利宣言に、心は呆気をとられたが、すぐに負けじと言い返した。


「俺だって負けない」


友哉に、これから一人称を「俺」に変えろと言われたが、やはり言い馴れない。


声はもとから低めだったので、意識していれば問題はなかった。


「ま、お互い頑張ろう」


すれ違いざまにつぶやいて、実はどこかへ歩いていった。