あれから前日までの五日間、血の滲むような努力を心は強いられた。


五月十九日━プリコン当日━


言葉遣いも直され、以前言っていたように髪をワインレッドに染めた。


全校生徒が詰め込まれた体育館は熱気が凄まじかった。


巨大扇風機が取り付けられているとはいえ、気休めにしかならない。


午前中一杯を潰して行われるので、女子だけならず男子も盛り上がっていた。


九時ジャスト。


一斉に照明が落とされ、体育館は闇に包まれた。


静寂が訪れた場内は、司会の友哉が舞台袖から現れると再び騒がしくなった。


「「「友哉くーん」」」


友哉ファンの女子が黄色い声を上げる。


それに愛想よく振り返すとより一層声量がヒートアップした。


「ご静粛にお願いします。これより第一回、Mr.プリンスコンテストを開催いたします」


丁寧な物言いで友哉は続けた。


「お手元のプリントに載っている方たちこそが、今回エントリーされたイケメン三十二人です。裏にこのコンテストの詳細が書かれているので、目を通しておいてください」


友哉はマイクの電源を落とすと、軽くお辞儀をし舞台袖へ下がっていった。


代わり、麗がマイクの電源を入れた。


「では、エントリーナンバー一番。武中強(タケナカツヨシ)くん、お願いします」





舞台裏。


抽選で決まった心の出番は二十八番。


見る側は疲れて、あまり注視してもらえないだろう。


心は緊張をほぐすため、あてもなく校内を徘徊した。


亜美に、出番が近くなったら連絡をくれるよう頼んだ。


新聞部の活動で忘れなければいいが。