「しんどっ!」


やっとのことで辿り着いた三十階。


心は毎年開かれる町内マラソン十キロ走るより、疲労していた。


首筋に沿って流れる汗を拭いながら、麗の家を探した。


「あった・・・」


『神崎』と記されたプレートを見つけると、安心感からか、全身により一層疲労感が襲い掛かる。


チャイムを鳴らすと、私服姿の麗がドアを開けた。


部屋着でも麗はぬかりない。


派手すぎず、地味すぎず。


考え抜かれたコラボレーション。


オプションとしてアクセサリーもつけている。


まぁ、学校でもつけているのだが。


リビングへ通されると、他の三人は見ていたテレビから目を離した。


「あっ!やっと来た♪ここおいでよ」


優は自分が座っているソファの右側を叩いた。


広々とした空間の中央には、人一人寝れるようなテーブルが置かれ、壁に沿って四十インチ程度の液晶テレビが設置されている。


テーブルを囲むように三方に黒いソファがずしりと構え、より豪華さが引き出されているように思える。



部屋の端には、名前が分からない植物が背を伸ばして笑っている。


カウンターキッチンが備え付けられているが、まるで新品であるかのように汚れ一つない。


心は優に言われた通り、ソファに座ると予想以上に沈んだ。


「じゃぁ、ビデオを見ようか」


麗がハードディスクを操作している間、友哉は心にお茶を渡した。


「お疲れ様です」


「ありがとう」