愁はもといた位置に胡坐をかいた。


すると、眼の端になにやら物体が動いた。


それが人だとわかるのに二秒、心だと気づくのに三秒かかった。


「さっさと出てこいよ!盗み聞きなんてタチ悪ぃぜ!」


麗は、自分に向けられた言葉でないと分かると愁の視線の先を追った。


木陰から決まり悪そうに俯いた心が、姿を現した。


「座れよ」


顎で自分の前を指した。


それに従い、心は正座して座った。


すると麗の睨むような視線が、心を突き刺した。


麗に言われたことを思い出し、直ぐさま片膝を立てた。





男らしく





美しく・・・





でなければトイレ掃除一週間が待っている。


麗は納得したように頷くと、眼を愁へ戻した。


「じゃぁ、続き話すぜ」


三人で円形を作ると、愁が話を再開した。





「俺が落ちたのは確かだ」





だが突然、一階下-視聴覚室-のベランダから彼方が身を乗り出した。


そして俺をそこに引き込んだんだが、その反動で彼方が空中へ放り出された。





「後は俺の代わりに真っ逆さまてわけ。・・・ってか鏡夜見てたんじゃねぇの?」


「それが、怖くて目瞑っちゃてたんだよね」


なんとも情けない醜態に、二人はこの先が心配になった。