一方、心は病院へ来たのはいいものの、彼方の病室を訪ねる勇気がなく待合室に座っていた。





ただ見ているしか出来なかった


塔上くんが、周りに適確な指示を出しているのを耳で聞いていただけ。





器の小ささを感じた。


心が落ち込んでいると、視界の端に麗が映った。


彼も心なしか暗い。





励ました方がいいのかな。





悩んだ末、心は一声かけようと近寄った。


「麗!」


しかし病院に響いたのは心の声ではなかった。


「愁・・・」


心は足を止め、様子を見守った。


看護師に「静かにしてください」と軽く注意された愁は、麗を連れて場所を変えた。


心も気づかれないよう後をつけると、裏庭についた。


愁は芝生の上にごろんと寝転んだ。


芝生がそよ風に揺られ、愁の頬をくすぐった。


麗も愁に促され、青空を仰いだ。


二人の視界は青空と、それによく映える白い雲で満たされた。


「ここで終わりにしようぜ」


愁が腕を頭の後ろで組んで枕にした。


麗は、彼が何を言いたいのか分かっていた。