長いことはもたない





愁自身が一番よく分かっていた。


麗だけでも上げようと左腕に渾身の力も込める。


「愁!離していいよ。落ちても多分、木が衝撃を受けてくれるから」





確かに





普通に落ちるよりは幾分かマシかもしれない。


だが愁は麗を離す気など毛頭もなかった。


それに、落ちるなら麗よりも自分の方がいい。


人一倍美を愛し、人一倍美が似合う麗を傷つけるわけにはいかない。


そう思った愁は下に眼向けた。


愁は深呼吸すると、自分のもてる力を全て使い麗を屋上に投げ入れた。


予想外の出来事に麗は呆然としたが、すぐに屋上に縁へ駆け寄った。





バキバキ





ダァァアン





木の枝が折れる音と、人が地に叩きつけられる音がした。