愁は窓を開けて身を乗り出した。


フェンスが一つ分、抜け落ちている。


おそらく、麗が掴まっていたフェンスだろう。


愁は目の前が暗くなるのを感じた。





落ちたのか・・・?





愁は携帯を取り出して彼方に電話を掛けた。


「はい!?」


少し息を切らした彼方が出た。


「麗のやつ、今落ちたよな!?」


パニックになった愁は、自分を落ち着けるため辺りをウロウロした。





「落ちていない!さっき鏡夜君に連絡したら落ちてきたのはフェンスだけだって。麗は落ちる瞬間、隣のフェンスに移動したらしい」





愁は再び窓から身を乗り出した。


眼を凝らしてみると、フェンスの隙間から肌色が見えた。


だが安心するのはまだ早い。


愁は少し考えると、察し窓枠に足を掛けた。


足場になりそうな場所を探すと、五・六センチのでっぱりを見つけた。


身長に片足ずつ乗せると、窓から手を離した。


壁に寄り添って一歩一歩進んでいく。


三メートル先にあるフェンスが凄く遠い。


しかし、トロトロしている時間はない。


愁は覚悟を決めると、大きく右足を出し、体重を上手くかけると思い切り飛躍した。


ギリギリのところでフェンスに掴まると、一気に上って屋上内に着地した。





うっしゃぁ♪





と心の中でガッツしたが、悠長にしている暇はない。