一方、愁は一人で焦っていた。


「麗、あいつ何してんだよ!!」


ジェイソンに追いかけられてもこんなに速くはならないだろう、と思うほどのスピードで屋上を目指した。


実はあのフェンス、一部不備があり外れやすくなっているのだ。


以前屋上でサボっていた時、遊んでフェンスに乗ったところ急に足場がぐらついた。


愁は持ち前の運動神経で身をとっさに翻し、屋上に着地することが出来た。


麗も運動はできる方だが、同じ状況で必ず反応できるとは限らない。


校庭から大声で叫ぼうとしたが、他の声に掻き消されてしまい、麗まで声が届かなかった。


普段から鍛えられた足は悲鳴を上げることなく、階段を駆け上がるときもスピードを維持し続けた。


目的地に辿り着いた愁はそのままの速度でドアを開け放った・・・


と思ったが開かなかった。





ガン!!!





「痛って!!」


勢いをつけて突進したため、開かなかった扉に衝突してしまった。


額を押さえながら痛がっていた愁だが、すぐに気を取り直した。


「おい!!麗!!」


愁は灰色の扉を叩いて麗に呼びかけた。