五月十日。


晴天の中、事件は起こった。


「心ー!!大変大変!!」


亜美が登校してきた心に、一枚の紙を突きつけた。


「何これ・・・」


渡された紙とは、数日に一回発行される新聞部の記事。


そこにはでかでかと





『潤わしの王子、神崎麗!実はハーフ!?ベールに包まれた美貌』





とワープロ文字が印刷されており、一面を麗の写真が飾っていた。


驚くべきは、その写真の中の麗と瞳が青いこと。


合成なのは明らかだった。


「亜美・・・喋ったの?」


「んなわけないじゃん!!」





一体どこから漏れたのか





だが、心達には心当たりがある。


「この前授業中に回した手紙どこ?」


「それならポケットに入れたまま・・・」


亜美はブレザーのポケットに手を入れるが、あるべきはずの感触がない。


「うそ・・・」


蒼白色になった亜美は、反対側のポケット・スカートなど、あらゆるポケットに手を突っ込むがどこにも見つからない。


「落としたんだね・・・」


心は認めたくない事実を口にした。


「ほんとごめん!!」


「昨日発行したのに、気づかなかったの?」


「昨日は部活に出てなくて・・・」


両手を合わせ平謝りする友を見ると、心は許すしかなかった。