「明日は20分、明後日は25分・・・毎日5分ずつ増やしてけ」


はい、と渡されたプリントを心は眺めた。


そこには、毎日帰宅してからこなさなければならないメニューが、事細かに綴られていた。


日を追うごとに、メニューの量と種類が増えている。


「これ・・・全部すんの?」


「サボったら自分が損するだけだぜ。逆にそれ以上もやんなよ」


愁は伸びをすると共に、大きな欠伸をした。





あっ・・・





心は気づいた。


愁の目元に、うっすらと隈があることに。


自分が確実に体力を作り、なおかつ筋肉のつき方も考慮して、考えてくれたのがよく分かる。





絶対にサボらない





心は何度も何度も誓ったのだった。


「鏡夜ー、そこ座れ」


愁は木の根元指差した。


愁の隣に腰した心は、水の入ったペットボトルを渡された。


「ありがとう」


「あのさ、昨日麗と何かあった?」


愁は視線を心に向けずに聞いた。


「え?」


「例えば・・・麗の眼を見たとか」


「あぁ!」


心は一通りのいきさつを話した。


「それ、誰にも話すなよ」


心の脳裏に一瞬亜美の存在がちらついたが、すぐに消えた。


「大丈夫だよ」





その後、鬼コーチの指導の下、心は身体を鍛えられたのだった。