二人が並んで廊下を歩いていると、前方にひときわ目立ったオーラを発している者がいた。


「神ちゃん!」


神ちゃんってツラしてねぇだろ!と突っ込みを入れたかった愁だが、倍になって返ってきそうだったので止めておいた。


呼ばれたのに気づかなかったのか、麗は振り返ることなく歩き続けた。


「待ってよ、神ちゃ~ん」


優はパタパタと走って、麗の前に回った。


必然的に愁からも優の顔が見えるようになるので、優の表情の変化がよく分かった。


初めは女の子を悩殺するキュートな笑顔だったのが、みるみるうちに青くなっていく。


涙目になった優は、走って愁の後ろに隠れた。


「どうした?」


「神ちゃん怖いー」


愁が顔を上げると、麗と目が合った。


いつもより少し目を細めた麗は、睨んでいるように見えた。


「俺に近づくな」


そんなオーラを発している。


「久しぶりだな・・・あんな麗は」





昨日、あの後何かあったのか?





今はそっとしておくべきだと判断した愁は、優を連れてその場を離れた。


「神ちゃんがあんなに不機嫌になるのって、アレしかないよねー」


「そうだな」





恐らく何かの拍子に、自分の目を鏡夜に見られたんだろうな





愁は深い溜息をついた。