「あー、だめだめ」


麗が呆れ顔で手を振った。


「えっ・・・何が?」


何か間違っているのか。


心は傍にあった全身ミラーで見直した。


「着崩しって知ってる?」


「知ってるよ」


「じゃぁ、やってみて」


麗は具体的に指示せず、ただ腕を組んで心を見ているだけだった。


「あの~、どうすれば・・・?」


「俺、基本的に放置プレイだから」


表情一つ変えないで答えた。


「はぁ・・・」


とりあえず思いつくのはネクタイ。


第一ボタンを開けてネクタイを緩めた。


「ストップ」


「はい?」


「緩めすぎ」


放置プレイじゃなかったのかよ、と心は麗を睨むようにして見た。


麗はブレザーの内ポケットから二枚の写真を取り出した。


写真には二人の男が写っている。


「どっちの方がいい印象を受ける?」


「左・・・かな」


「どうして?」


心は写真を注視した。


「何となく・・・右はだらしない気がする」


「そう」


麗は器用に指を鳴らした。


「何でもかんでも緩めればいいってもんじゃない」