翌日、登校してきた心に道行く生徒の視線が集まった。


心の噂は全校生徒の間に広まっていた。





女が男になる





前代未聞の出来事に、一人残らず興味を抱いていた。


心は、やけに軽く感じる髪を風にさらしながら、校内へ入った。


待ち伏せされていたのか、目の前に彼方が映る。


靴箱の隣に直立している柱に体を預け、本を読んでいる。


ちょうど読み終えたのか、パタンと閉じて顔を上げた。


靴を履き替えた心と目が合う。


「おはよう」


この爽やか笑顔にみんなやられているんだな、と心は思った。


「おはよう」


心も挨拶を返すと、彼方は真っ先に髪に触れた。


「さすが、優」


彼方は満足げに頷くと、心に言った。


「今日はファッションセンスを極めてもらう。放課後、生徒会室に来てね」


ファッションといえば、神崎麗。


心の脳裏に彼の姿が浮かび上がる。


独特の雰囲気をもっている彼は、一度見たら忘れがたい。


というより、忘れられない。


彼はどのような人物なのか…


心は放課後が楽しみになった。