もう5月。


7時といっても薄暗い程度だった。


家々が立ち並ぶ道路を、二人は肩を並べて歩く。


いつもの散歩コースを変更されたレオは、不服そうに優を引っ張った。


「そっちじゃないって」


「ここまででいいよ?レオが可哀想」


小型犬のわりに力が強い。


優が力を緩めたとき、ここぞとばかりにレオが逆走する。


「僕が送るって決めたら送るの!」


仕方がないので、最終手段として優はレオを抱き上げた。


「ほら、さっさと行くよ」


数歩先に歩いた優が、振り返った。


おろせー!という声が聞こえてきそうなほどレオが暴れる。


そんな主人と飼い犬のやりとりを見て、心は思わず笑ってしまった。


「何笑ってんのさ~」