「x=6、y=4です。」

男子生徒は立ち上がりあっさりと答えた。
名前は篠崎 蓮(しのさき れん)。蓮は学年で1位、2位を争うほどの成績で渉とは掛け離れた頭脳の持ち主だ。渉とは幼馴染である。

「よし、さすがだな。」

石脇は黒板に模範解答を書き始めた。その間に渉は後ろを向き蓮に「サンキュー」の形に口を動かした。それに蓮は肩で笑って答えた。
 
6時限目の終わりを知らすチャイムが鳴った。それを聞いたあと渉は蓮の席のところまで行ってさっきのお礼を言っていた。

「寝てんなよ。」

蓮はそれを言うのと同時に黒い手提げカバンを持って教室を出て行った。

「ちょっと待てよ。まだ準備してないんだ。」

渉が急いで青い肩下げのバックを持ったところに、愛梨が話しかけてきた。

「今日、このあとヒマ?」

愛梨はちょっと申し訳なさそうに言った。それに渉はため息をついた。

「どうせヒマじゃないって言っても、ダメなんだろ?」

これは毎回のことで、愛梨の誘いは断れないことを分かっていた。

「今度の彼氏とデートのときに着る服を選ぶの付き合って。男子の意見聞きたいの。じゃぁ校門で待っててね。」

渉が頷くより先に話していた女友達の方に戻って行ってしまった。渉はそれに肩を落としながらも教室を出て蓮の後を追った。