「蓮にはまだ秘密だよ。」

愛梨が立てた人差し指を口元に当てて言った。

「何が?」

肩を落とした渉のウンザリ度はほぼMAXに近かった。

「この希美はね、前から蓮に一目惚れしてたの。」

突発的に出る大胆発言というのは、こういう性格の者が大抵言うのであろう。

「ちょ、ちょっと、愛梨。そんなに唐突に言わなくても。」

希美は顔が赤くなり始めていた。

「ふ~ん。で?」

渉は全く関心がない。もしくはそんなことはどうでも良いと思っているに違いない。

「それで、あたしが今日あんた達を呼んで、希美に蓮と会う機会を作ったって言うわけ。恋のキューピットちゃんみたいなね。」

愛梨のテンションは上がりっぱなしのようだ。

「じゃぁ、蓮だけ連れてくれば良いじゃんかよ、何でオレまで?」

渉は完全にふて腐れていた。

「だってあんたの性格じゃ、このこと知らなきゃ何言い出すか分からないからね。」

愛梨にしては久しぶりにまともな筋の通り方である。

「んで、今日告るの?」

愛梨の筋に一本取られた渉はいきなり核心を希美に聞いてきた。

「えーと、それは・・・。」

希美は俯いてしまった。それを愛梨がカバーした。

「だから今日は、蓮に合わせただけって言ってるでしょ。」

愛梨はちょっと大きな声をあげた。

「そんなに大きな声出すと、蓮に聞こえるぞ。」

渉は愛梨をなだめた。