愛梨は二人の間に無理やり入り込みながら言った。

「だって、蓮が先行くんだからしょうがないじゃん。」

渉が言える唯一の言い訳だ。

「もう、蓮。何で先行くの?」

愛梨は蓮の顔を見たが、蓮はまっすぐ前を見たままだ。

「嘘だろ?走ってきたの。」

冷静なまま蓮は言った。

「何で?」

渉と愛梨の声が重なった。

「お前、息切れてないじゃん。それに額も汗ばんでない。渉を見れば分かる。」

蓮は書かれていた文章を読むかのようにすらすらと言葉を並べた。

「何?そうなのか?」

渉は愛梨のほうを見て言った。

「さっすが蓮様。よくお分かりで。」

愛梨は簡単に白状した。

「でも、この暑さの中なら早歩きでも汗掻くんじゃないの?」

渉の素直すぎる疑問に蓮は少々呆れ気味だ。