「ここは、どこだ?」

その声の主はどこにでもいる普通の青年だ。
名前は春日 渉(かすが わたる)。高校1年生。
周辺を暗闇に囲まれていることに気付いた渉は闇雲に手で探っていた。

すると突然、近くから女性のような高い声で渉の名が呼ばれた。

「誰かいるのか?」

渉の声だけがこだました。

渉の問いに女性のような高い声は答えなかったが、それと代わりに渉を覆っていた霧のような暗闇が少しずつ晴れていった。

闇が消えていく際に光が漏れはじめた。その光に渉は耐えられなく瞼を閉じた。

光が辺りを覆った頃、渉は瞼を開いた。
目もだんだんそれに慣れはじめた。

間もなく渉の前に現れたのは、木々が生い茂り、鳥たちが歌いあい、川のせせらぎが聞こえる、鮮やかな世界だった。

渉はその平和を象徴するかの光景にただただ安心の一息をもらしていた。