そんなあたしを抱きしめる腕に力が入ったいっくん。
「詩音、今から藤島の家に行こう!」
そう言ったいっくんはあたしの手を引き、強引に階段を降りて行く。
「えっ!?あたし、パジャマ・・・」
「そんなんどうだっていい!ちゃんと藤島と話すんだ!」
そしてあたしのお父さんとお母さんに頭を下げてこう言った。
「責任を持って、俺がちゃんと連れて帰ってきますから!詩音をしばらく貸してください!お願いします!」
頭を上げないいっくんに、お父さんが言った。
「一朗くん、任せていいんだね?」
「はいっ!」
目を伏せたお父さん。
「詩音、せめて着替えて行きなさい・・・」
「あ・・・ありがと・・・」
慌てて部屋に戻り着替えを済ませたあたし。
そのあたしの手を握ったいっくんは、もう一度お父さんとお母さんに頭を下げて「行ってきます。」と言って、あたしを連れ出した。