黙っていたら何も変わらない。僕は勇気を出して、口を開いた。
 「悠弥くん。僕ね、悠弥くんのこと好きだよ。でもこの気持ちは恋じゃなくて友情なんだ」
 絡められた指をほどく。
 「ね、悠弥くん。これからも友達でいようね」
 悠弥くんが笑顔になる。
 説得、うまくいったのかな?
 「やだ」
 「えっ?」
 「気持ちを全部吐き出したらさ、彰を誰かに取られるの、嫌になった」
 あ、あれ?説得失敗……?
 「彰を俺のものにしちゃうから」
 悠弥くんが真顔になる。
 嫌な予感がした。
「わっ」
悠弥くんに押されて、僕はベッドに倒れこむ。
こ、これ、まずくない!?
「ちょっ、悠弥くん、やめてよぉ!」
制服のネクタイに手を伸ばす悠弥くんを振りほどこうと必死にもがいた。
「……なーんてね」
悠弥くんの手が、僕の制服の襟を直す。
「彰はかわいいなぁ〜」
からかうように笑いながら、悠弥くんは僕の上から退いてベッドの上に座り直した。
……どうやら僕はからかわれたらしい。
そうだよね、冷静に考えたら悠弥くんが僕の事好きになるはずないよね。
「もぉ〜、そういう冗談はやめてよ。なんか寿命が縮んだような気分だよー」
「あはは、ごめん。でもさ、俺にとって彰が大切な存在っていうのは本当だよ。だからさ、これからもずっと、親友でいてくれ」
悠弥くんがまっすぐ僕の目を見つめながら言った。
「僕にとっても、悠弥くんは大切な人だよ。だから僕からもお願いするね。ずっと親友でいてね!」
僕は笑顔で右手を差し出した。
悠弥くんも笑顔になって、僕に左手を差し出す。
握手をすると、悠弥君の手が僕よりも少し大きい事に気がついた。
なんだか、頼もしいな。

つづく。