「彰が俺に聞きたいのは……俺が彰のことどう思ってるか、かな?」
 すごい。どうして悠弥くんには僕の考えてることがわかるんだろう。
 「俺はさ、彰のこと好きなんだよ」
 部長の予想どおりの告白だ……
 「俺の初恋の話って、したことあったっけ?」
 悠弥くんが突然話題を変えた。
 「ないと思う。初耳だよ」
 「俺が小学生だった頃の話なんだけどね……」
 悠弥くんが語り出す。
僕はティーカップとソーサーをテーブルに置いて、悠弥くんの表情に注意を向けた。
 「ガキの頃から、俺って割と女子に人気あったじゃん。イマイチ何処に魅力感じてんのかわかんないんだけどさ」
 ただのイケメンが言えば腹が立つことも、悠弥くんが言えば不思議と腹は立たない。友達だからかな。
 「たくさん告られて、ラブレターもバレンタインチョコもいっぱいもらって、俺調子に乗っててさ、同じクラスのちょっと気になってた女子に告白したんだよね。断られるわけない、楽勝だって自信たっぷりに」
 悠弥くんがため息をついた。
 「まさかのまさかで、断られたよ。俺、すごいショックだった」
 成功続きの順調な人生を送っているように思っていた悠弥くんの、意外な挫折。
 高嶺の花のような、特別な存在と思っていた友達が、少し近くに感じた。
 「フラれてから、世界中みんなが俺に冷たくしてるように感じた。でも彰は、いつもと変わらない笑顔を俺に向けて『一緒にあそぼ!』って手を差し伸べてくれた。あのときの、温かい手の感触、まだ覚えてる」
 悠弥くんの視線が、右手に移る。
 「それからずっと、彰のことしか考えらんなくなっちゃってさ。高校まで追いかけて来ちゃった」
 悠弥くんが僕の左手に手を重ねた。
 「この手の温もりが、俺の心を動かしてるんだ」
 そっと、指を絡められる。
 「……好きだよ、彰。気持ち悪いかもしれないけど、俺の気持ちは彰と一緒にいたいって望んでる。きっとこれは恋だと思う」
 「……」
 悠弥くんの気持ちを受け止めるって決めた筈なのに、何て答えたらいいのかわからなくて、僕はうつむいて黙り込んでしまった。