女が表情を笑みへと直したとき


「恵美、二人っきりがいいなぁ」



と言ってきた


お前の名前は恵美っていうのか



初めて知った


っていうか顔自体わからなかったし…


あれ?そういえば今日のお昼に女から電話来たよな…



それって…



恵美って名前じゃなかったっけ?



やっぱり顔見てもわからなかったし…



「ゴメンねー、時間ないから」


さっきから何度もことわり続けているのに諦めない恵美という名の女を視界に移しながらも、その隅に槐の姿を入れる



さっきからあたしの斜め後ろで愛想笑いをしながら立っているのは、紛れもなく槐だ




やっぱり女が嫌いなんだろうな…と思いながら、なら早く断らないとと思い次どうしようかと考える



「お昼休みに電話したのに会ってくれなかったじゃん!」


怒った顔をしているつもりなのか、頬を膨らませ始める



だから、笑う理由にしかならないんだって…



もう面倒だったので言った





「何で断られてるか想像つかないの?」



今、あたしは笑っている


だけど、瞳と声は全く持って笑っていない



だからだろうか?