「紫音くん、今どこにいるのぉ?
恵美ぃ、さっきからずぅっと探してるのにぃ、どこにもいないんだもん」
電話の奥から聞えてくる可愛らしい声
だけど名前を聞いても、声を聞いても、あたしには誰かなんて見当もつかない
たぶん顔を見てもわからないだろうけど
こんな人いたっけ?というふううにしか思えない
それに女は基本付けまつ毛の国の住人にしか見えないし
「何か用事でもあった?」
と、一見棘のありそうな言葉は、王子様のようにゆっくりとなめらかになさ敷く言えば、棘なんてものは抜けおちてしまう
「んーん、ないけどぉ…恵美ねぇ?」
そこまで言って話すのを止めた女
だから仕方なしに
「ん?」
と言って先を促す
こういうの面倒だから嫌いなんだよな…
早く喋れ、と思いまた顔を歪める
そして転入生の存在を思い出し、また90度顔を捻ると…
嫌な笑みを浮かべた転入生
それと同時に聞こえてきた女の声
「紫音くんにぃっ、会いたくて電話しちゃったぁ」
キャッ、あたしったら言っちゃったわ、的な雰囲気を電話の奥から感じ、この携帯を今すぐにでも処分したほうがいいのかもしれない、という考えにたどり着くが冷静に考え、落ち着きを取り戻す