次の日、バイトに行って店長に話し聞きにいったらさ、沙希は良いとこのお嬢さんらしくてさ、橘グループって知ってるか??

そこの1人娘でさ。昔から婚約者がいて、そいつのとこに行ったらしいんだ。

沙希は行きたくなくて親と相当もめたらしいよ。でも、何が出来るわけでもない。
結局は言いなりになるしかなかったんだよ。
沙希がいなくなってから1ヵ月ぐらいして新聞に結婚の記事が載ってたよ。
パリ在住の大富豪らしい。結局は政略結婚だったんだけどよー。
沙希はバイトだって親にかなり反対されてたらしい。

そんなことも何にも知らないでいつかは沙希と一緒になれるって信じてた。

馬鹿みたいだよな。好きな女が苦しんでたのに助けてやれなかった。わかってやれなかった。

気持ちも何も伝えられないまま終わりになっちまった。

それからは、俺は女を好きになれなかった。何かどうでも良くなっちゃってさ。

そして、沙希が俺の心からいなくなることは一度もなかった。

きっと沙希はもう俺の事なんか忘れてるのにな…。俺のことどう思ってたかもわかんねぇしな。

でも、もしかしたら沙希があのコンビニにまた来るんじゃないかとか心のどっかで期待しててさー。バイトやめらんねぇんだ。

未練タラタラでかっこ悪いよな~。」


話し終えて簾治は泣きそうな顔で私に笑った…。


「きっと、きっと沙希さんも簾治の事忘れてないよ。忘れるはずないよ。
沙希さんも簾治の事大好きだったんだよ。だから、本当の事が言えなかったんだよ。好きって言っちゃったら、お互いがもっとつらくなるのをわかってたんだよ。
沙希さんの優しさだよ。。」


気づくと私は泣いていた。。


そして、簾治を抱きしめていた。


「無理に笑わなくてもいいんだよ。簾治。つらい時はがまんしなくたっていいんだよ。そんなにがんばると壊れちゃうよ。泣きたかったら泣いていいんだよ。簾治…。」



私がそう言うと、簾治は今まで我慢していたものすべてを出すように肩を震わせ泣いた。