その頃。…兎川村から遠く離れた『きなこ』劇場。稽古場にて。

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佐々木「ハァ…。舞台は血まみれ。俺達もボロボロだし、紫苑さんと篤志さんは行方不明になっちまって。これからどうしたらいいんすかね〜。」


蓮が弱気になってぼやくのも、無理ないだろう…。



大事件の起きた昨日の定休日。その翌日、劇場は荒れ果てていた。

運よく近くのホールが空いていたため 今日の公演自体は中止せずに済んだが…

お客に対し、いつもどうりの芝居が観せられず、ミスも目立った。

一人無傷だった池堀に起こされ、皆が目覚めた時には、何者かによって傷の手当がなされており、傷の悪化は免れていた。

だがそれでも、彼等が受けた身体的、精神的なダメージは大きく
演目にも支障をきたしてしまったのであった。



今日の公演は終りだ。

いつもなら、直ぐにこの稽古場で練習を始める彼等だが

今日ばかりはさすがに皆、身体を休めている。
睡眠をとるも少なくないが

ほとんどが、それぞれに思うことを口にし、それらを共有する作業をしていた。



「ほんと…いろいろまずいよね。今日、お客さんにも言われちゃったよ。『今日は皆元気無いね。どしたの?』って。これ重症じゃね?」

「だな。俺らボロボロ過ぎだ…。てかさ、昨日俺達を殴ったのも、やっぱりルルちゃんたちお客さんだったんだよな?」


「あぁ…。正直言うと、今日も怖かったかも。またそんな人が出てくるんじゃないか とか。もちろん、んなわきゃないんだけどさ。」

「確かに。」

怖い。 どうやらこれは昨日、劇団員全員に植え付けられてしまった感情だったらしく

この意見には賛同する者が多かった。

「でもさ、きっと理由があったんだよね。ルルちゃんにも。じゃなきゃあそこまで本気にならないでしょ。」

それにも頷くメンバー達。

「紫苑さんのこと…殺すって言ってなかった?ルルちゃん。あれからどうなったんだろ。」

「篤志さんも心配だな。二人とも無事なのかな…。」

「あんだけ殴っといたくせに、俺達のことは逃がしてくれたじゃん?それも気になる。あと手当をしたのが誰なのかも。」


疑問は絶えないようだ。