一行が、兎川村(トカワムラ)に帰ってきたのは朝の5時。
村の者達の朝は遅い。まだ皆寝ているだろう。

兎川村、別名『夜兎の里』は 美知瑠たち『夜兎』と呼ばれる忍者が住む隠れ里だ。

山五つ分もあるこの大きな村は、一般人はもとより、村の忍びでさえ、村の全貌を知る者が少ない。



車やバイクは、村の外に四ヵ所ある、大きな駐車スペースに停める。

美知瑠達一行を乗せた車三台は 事前に決めておいた通り、それぞれ三ヵ所に分かれて車を停めた。



下忍たちのバスは、仮眠を取るため、彼等の宿舎に一番近い駐車場に。

中忍たちの車は、村で1番大きな寺の駐車場へ。




そして美知瑠達の乗った車は、一番広い駐車場に。
一般向けにと建てられた、村で唯一の旅館《兎宿(ウサヤド)》の駐車場だ。



篤志には、ここでしばらく過ごしてもらうことになる。

宿代については美知瑠が顔を利かせ、一泊3千円程にしてもらってあるし

食事は併設のレストランで食べてもらえれば安くあがる。車の中で、一食あたり10%が割引になる 宿泊者特別割引券(20枚綴り)も渡した。


誘拐したとは言え、
彼に不自由を強いるつもりは毛頭ないのだ。




篤志に対し、この日これからの予定を一通り話すと、宿にチェックインさせ、仮眠をとるように促した。



瑠衣は、車で美知瑠を上忍用宿舎の近くまで送り届け



その後自分は寺で葬儀の打ち合わせをしている仲間の元へ行き、合流した。

朝が近い。
梟が眠る前に一鳴きした。

ホー


…。