「……と、いうわけ。」


一部始終を話し終え
いつの間にか、美知瑠の涙は枯れていた。


九條「そっか。…紫苑さん、最期までおちゃらけてたんですね。なんか、変な気分です。」

美知瑠「…。他に質問は?」

暗いトーンで話を続ける。

九條「…………。」

しばしの沈黙。

そこへ、運転席に座っていた瑠衣から遠慮がちに声がかかった。


瑠衣「あの〜。サービスエリアに到着致しましたが、どうされますか?」


美知瑠「無いなら終わりますよ?ほら、サービスエリアにも着いたみたいですし。休憩するなら降りて下さい。」

瑠衣に甘えたところを見せたくないのか、突然サバサバしてくる美知瑠。

九條「あっ…いや…有るにはあるんですが…。」

美知瑠「何?」

九條「い いや… やっぱり後で。その…降りても良いんですか?」

美知瑠「あっそ…。どうぞ。降りて休憩して下さい。時間は15分。15分後には必ず車の中に戻ってて下さいね。」

九條「…てか、俺のこと信用して良いんですか?」

少し怒ったような口調で話す美知瑠に 申し訳なさそうに疑問をぶつけた。

美知瑠「あぁ。それなら大丈夫でしょ。随分遠くまで来ているし、高速道路の上です。逃げられるとは思いませんよ。それに 貴方は任務に直接関わる人ではないから……ッあ!!」

九條「へ??今、なんか言いませんでした?任務がどうとか…。何ですか、それは。」

やばいやばい…。

つい口が滑ってしまった。

丸居さんを殺したことはバレても 任務の全容、忍者であることをバラすわけにはいかない。


それこそ
従えている下忍達もろとも、お上に消されてしまいかねない。



美知瑠「あ…ぇと…あの、九條さん、いいから。気にしないで。うん。お腹も空いてるでしょうし、ほら、ご飯でも調達してきたらどうです?あ、財布は抜き取ってませんから。」


九條「え?あ…そうですか。まぁいいや。分かりました。じゃあちょっと、行ってきますね。」





九條が建物の方に向かったのを確認すると

他の忍び達も彼の見張りがてらに車から降り、つかの間の休憩をとった。

九條には見つかっていないが、車は三台。

距離を離して運転していた。

一台目は美知瑠と九條、そして瑠衣が。

二台目には中忍が三人、丸居紫苑の遺体を運んでいる。

三台目は大型バスで 瑠哉を含め、何人もの下忍達が乗っている。