数時間後。夕陽で空が赤く染まりはじめた。
「…ハァ…ハァ。」
舞台上には息も絶え絶えに苦しみ、悶える劇団員達が転がっている。
美知瑠の指示を受けた忍者達は、あれからずっと、役者達を殴り続けた。
ステージの床には血が散乱し この暴行がどれほど凄まじかったかを物語っていた。
その真ん中には、放心状態になった紫苑が無意識に涙を流し
その横には
狂気の眼差しで皆を見つめる美知瑠。目が異様な光を放っている…。
美知瑠「はぁ〜スッキリした♪もう良いよ。ありがとう。」
部下達に止めるよう促す。
瑠哉「美知瑠様、怪我人が大勢出てしまいましたね…。」
美知瑠に声をかけたのは彼女の部下の一人、瑠哉だ。
14歳の彼もまた
美知瑠の指示を受けて人を殴っていたため 手には血がこびりついている。
美知瑠「そうね。思わぬところで手を汚させてしまって…悪かった。」
美知瑠の目が元に戻った。
瑠哉「…いいえ。しかし、問題はこの後です。紫苑殿も、ここで始末してしまわれますか?」
美知瑠「いや。気が変わった。」
瑠哉「と…おっしゃいますと?」
キョトンとする瑠哉。
美知瑠「この人達を一旦眠らせて、全員このまま稽古場に運んでちょうだい。それから 丸居紫苑は…この後、私のタイミングで殺す。」
瑠哉の耳元で美知瑠が囁くように指示すると
瑠哉「はっ!!かしこまりました。」
そう言って他の忍び達に伝言を回した。
何故その方針に切り替えたか?
そんなことを尋ねる者は一人もいなかった…