信号が青に変わった瞬間、百合は猛スピードで走り出した。


前をゆく車を、次々と追い抜いていく。


「百合さんどうしたの。」


「百合ぃ〜危ないよぉ〜」


二人の声など聞こえていないかのように、百合はスピードを上げ続ける。


時折、バックミラーを見ながら。


翔太は運転席に乗り出して、ブレーキを押した。


悲鳴を上げながら車が止まる。


「危ないなぁ〜。運転代わるよ。少し休んでなよ〜。」


百合の息づかいは荒い。


車内には、クーラーが入っているにも関わらず、汗が流れ落ちた。


顔色も真っ青だ。


「ごめん…そうさせてもらう。」


百合は素直に、後部座席へ移った。


彼女はいったい、何をみたのだろうか。