冷たく凍った雪が溶け始め、冬眠していた動物達が太陽に顔をだし、

温かな日差しが人々を照りつけ、優しげな光で包んでるくれる春。

とある高校の女子生徒達は噂話に華をさかせていた。







「ねぇ聞いた？瀬戸嶋君と或奈さんの噂」

「聞いた聞いた。或奈さんのお腹にいる子って、瀬戸嶋君との子じゃないんでしょ？」

「なんか、或奈さんて援交してたらしいよ」

「やだーっ」


耳に届く、クラスメイトたちの噂話。
どうも、女子学生というものは噂話が大好きらしい。
色恋沙汰となるとなおさら。
その上瀬戸島グループの跡取り息子の噂ときた。
ああ、幼馴染か。
そんな事を思っていると、噂話をしていた女子グループの人達が私の座っている後ろの窓際の席の方まで近寄ってきた。


「里緒奈さん、大丈夫？」

「え、何が？」

「だって、里緒奈さん。瀬戸嶋君と別れたのって或奈さんとの事があったからでしょう？」


身体をもじもじとさせて躊躇いがちに聞いてきたクラスメイトの子。
なんだ、そんなこと。
まあ、確かにそうだね。
私、草凪里緒奈は中学一年から高校一年の間、瀬戸嶋裕貴と交際していた。
―――――いろいろあって別れたけど。
てか、なんでそのこと知ってるの。
女子の情報網ってほんと怖いわーー。


「んーでも、私にもう未練なんてないし…」

「そうなの？」

「うん。なんか恋をする気力も失せちゃってさぁ」

「えー里緒奈ちゃんモテるのにー!」

「お世辞はいいよ..」


苦笑をもらしながら暫く話をすれば、一時限目の開始チャイムが学校中に鳴り響いた。とたんに、数学教師の怒号を聞かせながら教室に入ってくる。
一斉に散ったクラスメイト達にほっと息をつきながら、私は数学のテキストとノートをとりだした。

こんなのが、私の平和な日常。

嘘つきも、悲しみもない、やさしい日常。

毎日に飽き飽きしながらも、私はこの日常が大好きだ。

クラスメイト達とのたわいもない会話も、大きな行事イベントも、購買で買えるメロンパンの争奪戦も。

全てが、私の大好きな日常。

こんな日が続くと、私は思っていた。