私を持ち上げて、早瀬君は
階段を上がって行く。
屋上へ行こうとしてるのかな、
予想通りだった。
早瀬君は私を屋上に連れて行った。
「はい、着いたよ。」
さっきまでとは違う、優しい話し方。
「あ、ありがと・・・って、何で私連れてこられたの?」
少し早瀬君にビビりながら、引き気味に質問した。
「・・・春坂さんが、無視するから・・・。」
「え・・・ そんなこと?」
私が言うと早瀬君は、
「謝ろうと思って、朝の事。」
頭をかきながら少し照れくさそうに言った。
「あ・・・」
私はふっと思い出して
なるほど
と一人で納得していた。
「あの・・・ 朝の事はもういいし、帰ってもいい?」
私は早瀬君に問いかけた、
すると彼は、
「・・・やだ。」
そう言って、拗ねたような顔を見せた。
「えええっ・・・」
少し驚いて、困った顔をしていると
「俺の事、そんなにいや?」
すこし寂しげな顔で尋ねられた。
「・・・いやっていうか、怖い・・かな」
すると早瀬君は、 そっか
と小さな声でつぶやいた。
なんだか少し子犬みたいだ。
「・・・・やっぱり、もうちょっとここにいようかな」
私は屋上のフェンスの近くに腰かけた。
早瀬君は、その隣の隣ぐらいに腰を下ろした。
「早瀬君って、下の名前なんて言うの?」
「俺? 俺は 晴(はる)。女みたいってよく言われる」
晴 って名前を聞いたとき、素直に綺麗だと思った。
名前負けしていない早瀬君もすごいけど。
「春坂さんは?」
「私は、桜だよ。ありがちな名前。」
「何で、いいじゃん桜。俺桜すきだよ。」
早瀬君が言った好きは花のことなのに
なんだか照れてしまう。
「早瀬君ってさ・・・」
言おうとしたときに彼に遮られてしまった。
「早瀬君ってやめて。晴でいいよ。」
「いや、でも・・・ なんか悪いし。」
「晴って呼ばなかったら、また泣かすぞ。」
そう言われてしぶしぶ呼ぶことになった。
「俺も桜って呼ぶから。」
そう言われて、なんだか少し顔が熱くなった。
なんでだろ。

チャイムが鳴ったから私たちは教室へもどった。
でも、授業とか全然興味なくて、
ただ隣の席の君が、案外優しいってこと、
知ったんだ。