一人の人間が徐々に、しかも加速度的に壊れていくなんていともたやすいことだ。


しばらくそんな状態をひた隠しにして普通を装い学校に通っていたけど、自分の気付かない部分から少しずつ生活態度に変化が現れていたらしい。


そして学園で俺の態度の悪さが目立ち始めた途端、園長の高木さんから進学できなければ退園と冷たく告げられてしまった。


一応そこからなんとか頑張って合格はしたものの、俺は新しい闇の種を得ることになった。


「……いて」


くわえた煙草の煙がしみて細めた瞳が、明るい空を見上げながら微かに虚ろに変わる。


……もしあの時不合格だったら、俺は今頃一体どこにいたんだろう?


「くっ、くくくっ」


つい想像した自分の成れの果てに小さな笑い声をもらして、にやついたまま煙草を窓枠でもみ消した。


「生きるって、面倒くせぇのな?葵さん」