「ようよう浅野。お前あの店からなんか盗ってこいよ」


学校帰りの道で、不意に後ろからにやけた中村が小さな雑貨屋を指差し話しかけてきた。


一瞬声のした方へ面倒臭そうに視線を動かしたけど、ズボンのポケットに両手を突っ込んだままシカトして歩き続ける。


……ウザ。


あれから高校に上がって最初の夏を迎えたけど、俺は中学の時と同様誰ともつるむこともなく一人で過ごしていた。


そんな俺に同じクラスの中村がちょっかいをかけ始めたのは施設育ちと知ってから。


「なぁ、お前なら捕まったって平気だろ?」


勝手に横に並んで歩く中村の言葉に僅かに眉をひそめた。


……平気じゃねぇよ。追ん出されたら行くとこねぇんだよ。親のいない俺がそんなに珍しいか。