とっさに俺はその揃いの鈴を乱暴に握りしめて、ごみ箱に投げ捨ててやろうと勢いよく腕を振り上げた。


でも勝手にびくんと止まったその腕を振り下ろすことができなくて、そのまま固まってしまう。


「……くそっ!」


何度こうして音も輝きも変わってしまったこれを捨てようとしただろう。


そして何度この腕が動かなくなって唇を噛みしめただろう。


俺は微かに震える腕を静かに下ろして、手の中の鈴をかしゃんと引き出しに投げ入れた。


それをじろりと冷たく睨み付けてからゆらりと立ち上がると、また闇に体を紛れ込ませていく。


葵さんの死をきっかけに更に両親を恨んで、なにもできずに一人で生き残る自分を恨んで、まるで無限の地獄に堕ち続けるようなこの心。


葵さんが言った「俺を一生許すな」という言葉通り、俺は誰かを憎まないと生きていられない状態になっていた。


それが正しいのか間違っているのかなんて考える余裕もないくらいに。