倒れてぴくりとも動かない母親と命を投げ捨ててしまった葵さんが、まるでシンクロするようにはっきりと目の前にいる。


「俺は死神みたいだね。今葵さんはなにを考えてるの?こんな俺を悲しんでる?それとも怒ってる?」


ふんと鼻で笑いながら、椅子の背もたれをぎしりと軋ませて真っ黒な天井を見上げた。


「でも葵さんに俺を責める資格なんかないよ。この傷を見て苦しめばいい。こうやって血を流し続けることが、俺にできるたった一つの仕返しでもあるんだから」


闇に向かってにやりと笑ったあと、引き出しにペンケースを戻そうとした俺の手がぴたりと止まる。


視線の先には初めて学校をさぼってこの部屋に駆け付けたあの日のキーホルダーが、くぐもった小さな音を鳴らして転がっていた。


青く綺麗だったはずの二つの鈴が、葵さんの返り血を浴びて今は赤黒く変色して完全に輝きをなくしている。


それは俺が一人きりになった数日後、ベットの下に落ちていたのを偶然見付けてからずっと引き出しにしまったままになっていた。