後々にカナコから聞いた話だが「何かあったら何でも言ってくれ」だった。カナコの家は、中流階級だった。

底辺をはいつくばる僕の生活には目が眩むものがあったが、カナコとの交際に反対されずにすんだ事にホッとしていた。

そんな事を思い出しながら耳に響くのは、カナコの家に繋がるコール音。目の前では、ボクから携帯電話を取り上げようとするカナコの頭を抱えて阻止する。

『…シノブ君!! カ、カナコ、そっちに行ってない?』

半泣きのカナコの親は、ナンバーディスプレイでボクの携帯番号だとわかるといなや、挨拶もする事なく娘の行方を確かめる。


「お久し振りです。さっき、ボクの家に来た所です」

『あぁシノブ君? カナコがそっちにいるのね。無事なの?』

心配そうにかけられる。優しそうなカナコのお母さんは、娘の居場所を知りホッとしていた。
放任主義ほどではないが、誰といるかと言うのを知れば後は何も言わないらしい。

「とりあえず、一晩カナコちゃんを預かりますので…」

その言葉にカナコの母親はスグに了解した。

いつもの事だけど、こんなにアッサリと了承する親もどうかと思うぞ…。